健全チラ裏読書メモ 65
- 2019/11/30
- 12:27
なんとなく読んだつもりになっていたが、実は読んでない本を読んでみた。マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』(新潮文庫)三人称で書かれている(ちなみに続編『ハックルベリー・フィンの冒険』は一人称)。子供向けのリライトで小学生の頃に読んだことがあると思うが、原作の印象はかなり異なる。トム・ソーヤーは腕白で冒険好きの男の子だが、元気のレベルを通り越して凶暴で野蛮なくらい。トムの描写は、いわば動物学者...
健全チラ裏読書メモ 64
- 2018/11/24
- 22:44
ピエール・モリソン『閉ざされた城の中で語る英吉利人』(中公文庫)マンディアルグが変名で書いた鬼畜ポルノ。自分はかなり以前に澁澤龍彦訳『城の中のイギリス人』として読んだことがあるはず。実は恥ずかしながら、数ページ読み進むまで『城の中のイギリス人』とは別物だと思っていた。冒頭では、細々とした設定説明・城に至る道程の景観や城の精密描写が延々と続くのだが、この部分を読んだ記憶がなかったからである。どうやら...
健全チラ裏読書メモ 63
- 2018/09/12
- 19:09
千草忠夫『悪霊』(ベストセラーズ文庫)明らかにドストエフスキーを意識したタイトルのSM官能小説。成績優秀・眉目秀麗だが悪魔的サディストの本性を隠しを持つ高校男子、哲哉(「美少年」と記述されているが、美青年の範疇だろう)が、実姉がら始まって、女子高生・女性教師・義母まで陵辱し征服していく。SMテイストはそれほど強くないが、緊縛・剃毛・浣腸・アナルセックス・随喜クリーム責・鞭打などはある。基本的に三人称で...
健全チラ裏読書メモ 62
- 2018/07/18
- 00:14
鹿島田真希『ピカルディーの三度』(講談社)表題作のみ中編の長さで、他に短編4作収録。2004年~2007年の作品。「美しい人」は、兄に対する妹の熱烈な片想いが、妹の一人称で語られる。妹の兄に対する欲望は、サディスティックかつマゾヒスティック。倒錯的な激しい愛が、キリスト教的な信仰の形に似てくるのが、この人の作品としてはお約束のパターンであろうか。妹は、ある日とうとう、眠っている兄にキスをしてしまう。その時...
健全チラ裏読書メモ 61
- 2018/06/17
- 12:40
ハーラン・エリスン『死の鳥』(ハヤカワ文庫)日本独自に編まれた短編傑作集。多くは、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞・エドガー賞などの受賞作、もしくは候補作となっている。いずれも既訳があるが、一冊に収録されるのは初とのこと。「“悔い改めよハーレクィン”とチクタクマンは言った」は、市民の生活時間が完全に管理され、遅刻が重罪となる社会のはみ出し者の話。作者自身が重度の遅刻魔らしい。このタイトルだけは自...